2012年3月15日木曜日

永遠と一日

テオ・アンゲロプロス監督作品、「永遠と一日」を観てきた。
北ギリシャの港町を舞台に、作家で詩人のアレクサンドロスの最期の一日とアルバニア難民の少年との交流を現在、過去、未来、そして現実と夢とで描いた作品。
青い海と夏の日に胸がしめつけられる感覚がたまらない。きれいな海の映像が挿入されるので悲しい感じはしないのだけれど、死期の近い母との会話や難民の少年との出会いと別れ、そして思い出の中で死に別れした妻と気持ちを通わせたいという思い、何よりも病におかされた自分自身がこの世と別れていくということ。これらの別れが郷愁ただよう世界として描かれていて心に残った。

(ストーリー)
アレクサンドロスは不治の病を得て、入院を明日に控え、人生最後の一日を迎える。母の呼ぶ声を耳に親友と島へと泳いだ少年の日の思い出の夢から目覚める。
彼は、妻アンナが遺した手紙を託すため、娘の元を訪ね、「9月20日は私の日・・・」と始まる一通の手紙からある夏の日、生まれたばかりの娘を囲んでの海辺の家での思い出をよみがえらせた。
町に出た彼はアルバニア難民の少年と出会い、国境まで少年を送り帰そうとするが、彼は離れようとしない。河辺で少年に前世紀の詩人ソロモスの話をするアレクサンドロス。幻想のなかでかの人ソロモスに出会うふたり。痛みをこらえながらアレクサンドロスは少年と旅を続けるうち、さらに過去の記憶が甦る。
仲間と旅立つという少年とバスに揺られていると、さまざまな人々が夢かうつつか乗り込んできて幻想的に描かれる。
結局、少年は大きな船で去っていき、思い出のこもった海辺の家は解体されることになる。病院行きをやめたアレクサンドロスの耳には、亡き妻の声が響く。(完)