2012年2月6日月曜日

しあわせのパン

監督・脚本は三島有紀子。
舞台は、北海道にある静かな町・月浦。
東京から北海道の月浦に移り住み、パンカフェ、マーニを始めた水縞尚(大泉洋)とりえ(原田知世)の夫婦。
りえは、大好きな絵本「月とマーニ」を子供の頃から大切に持っている。東京での暮らしの中で父親を失ってしまうと、うまく笑えなくなってしまった。
それを見て、尚が月浦で好きなものに囲まれた生活をしよう、と言ってくれてマーニを開いた。
尚がパンを焼き、りえがそれに合うコーヒーを淹れ、料理を作る。
マーニの前には、湖があり、夜になると月が輝き、常連客とご近所さんたちが集まる。
革の大きなトランクを抱えた山高帽の阿部は、実においしそうにコーヒーを飲み、パンを食べ、近所で農家をやっている夫婦は、子沢山でとても幸せそう。
なんでも聞こえてしまう地獄耳の硝子作家、陽子に、「りえさん、今日もきれいですね」と声をかける郵便屋さん。
まるで絵本の世界のよう。


物語は、夏、秋、冬と、悩みを抱えたお客様がやってきて展開する。

夏の客。
東京から一人の女性、香織が突然やってきた。沖縄旅行をすっぽかされた傷心の香織。そこに北海道から出られない青年、常連の時生がやってくる。沖縄に行ったことになっているので沖縄土産を探したり、日焼けをするために野原に寝そべったりと、香織に付き合う時生は次第に彼女に惹かれていく。
香織のために誕生パーティを開いた水縞夫妻。香織は二人が幸せそうにパンを分け合うのを見て、こころから二人に感謝する。
東京に帰る日、バス停に待つ香織のところへバイクで時生がやってきて二人はそのまま東京へ向かう。

秋の客。
近くに住む小学生の少女、未久。
母親が家を出てしまい、父親と二人暮らしをしているが口をあまりきかない。そんな娘にどう接していいかわからない父親。
水縞夫妻は二人をマーニに呼び、料理をもてなす。母親が得意だったかぼちゃのポタージュを作ってもらうと、最初は違うと嫌がる未久だったが、しばらく一人になって考える。そして、パンとポタージュをおいしいね、と笑顔で食べ始める。
パパと一緒に悲しみたかったと寄り添う娘と父親の姿に涙がこぼれてくる。

冬の客。
吹雪の夜、老夫婦から泊めてほしいと連絡が来る。
この地は二人の思い出の地である。
震災で娘を失い、二人で生きて来たが、妻は病にかかり余命わずか。
夫はこの思い出の地を、最期の地にしようと妻を連れて来ていた。
日に日に衰えていく自分が悲しいのだという。
水縞夫妻は吹雪の中、外に出ようとする老夫婦を引き留め、あたたかい料理をつくる。おいしいと喜んで食べる妻。そして、食べられないはずのパンを口にして「明日もこのパンが食べたい」とつぶやく。夫はその声に希望をみつける。
春、一通の手紙が届く。最期に妻と私に生きる喜びを与えてくれたことに感謝をしているという内容である。


りえのこころはとても純粋で、悲しい人の気持ちが、時々、りえのこころにも入ってきてしまう。
水縞夫妻はお客さまたちをあたたかく見守り、相手を思いやった一言をかける。
客さまがよろこんでくれると、夫妻もとても幸せそうな笑顔になる。
幸せの伝播だ。
夫妻の作った焼きたてのパンを大切な二人で半分こするシーンには涙がこぼれてくる。そして、優しい気持ちになる。

印象的なシーンに、深い雪の上を歩く、りえを真上から撮った絵があって、どうやって撮影したのかなあって思って見ていたら、ラストの「来年の新しいお客さま」につながったのでなるほど〜と思った。
映画館を出て行く人たちの後ろ姿がほっこりしていたのが印象的でした。

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